スウェーデンの北の果てでオーロラを見る③【人間もトナカイも楽じゃないね】

文化人への道

スウェーデン・ラップランドのブログもいよいよ最終回だ。

3日目(トナカイふれあい)

僕らが会ったのは野生のトナカイだ。スウェーデンの先住民であるサーミという人達は野生のトナカイと一緒に生活しているらしい。

彼らからサーミの生活や音楽について教えてもらったが、僕は前日の寝不足(オーロラを夜中まで見過ぎた)が響いてウトウトしていたからあまり覚えていない。

野生だから当たり前なのだが、ほとんどのトナカイは愛嬌がなかった。彼らは僕らが手渡そうとするエサ(乾いたコケ)にはあまり興味を示さなかった。僕らから離れてただ雪原を歩いていた。でも一部のトナカイは世渡り上手で、人間から多くのエサをもらっていた。

「野生」を捨てて振る舞うことで多くのエサを手に入れられる。それは効率的だし、評価されやすい。こうやって「野生」を捨てられるのも間違いなく一つの戦略だろう。

それでも僕は何故か、愛想もなくただ歩くトナカイに魅力を感じていた。

4日目:Arctic Skills (湖上での釣り・火おこし・かまくら造り)

今日は楽しみにしていた日だ。日頃からYouTubeでディスカバリーチャンネル(大自然でのサバイバルがメイン)を見ている僕にとって、雪の中で火起こしするというのはとても魅力的なコンテンツだ。

宿から20分ほど、ガイドのアキたちに先導されながら雪と風に吹かれながら歩くと、気づけば僕らは湖の上にいた。湖の表面は分厚い氷で覆われていて、さらにその上に雪が積もっているから、どこから湖なのかはよく分からない。

まずは湖上での釣りだ。細長いスクリューのようなものを地面に突き刺して、くるくると回していく。10分もしないうちに、刃は1メートル程の分厚い氷を貫通して、澄んだ湖の水が顔をみせた。

同様に他のグループも穴を開けていたから、氷の下にある魚たちから見れば、10本の光の矢が突如現れたことだろう。

直径15cmほどの小さな穴に、疑似餌のついた小さな釣竿を垂らして待つ。

10分が経過した。竿は動かない。暇なのでタバコに火をつけて目の前の雪原を楽しむことにした。(寒すぎてライターの火がなかなか付かない。手でライターを擦り、呼気で温めたらようやく火がついた。)

真っ白な大自然の中で吸うタバコは最高に美味しい。吸った空気の冷たさとニコチンが直接脳に届く。(もちろん吸い殻は持って帰った。吸い殻にはプラスチックが含まれているから、時間が経っても分解されないんだ。)

30分くらい経っただろうか。タバコは進むけれど、一向に魚が釣れる気配はない。他のグループも同様だ。

アキも諦めたようで、僕らは火起こしをすることにした。

火起こしにライターは使わない。代わりにファイヤースターターという金属の棒を使った。どうやらこれはマグネシウムを含んでいて、ナイフなどで擦ると火花が発生するらしい。それを火口に移せば火の完成だ。

ガイドのアキが「速く擦ろうとするんじゃなくてゆっくり丁寧に、強く擦るんだ」と教えてくれた。

なるほどと思い、教え通りに擦り続ける。15分経ったが火がつく気配はない。火口にしている木屑が荒すぎたのか、雪で湿ってしまっているのか。どう頑張っても一向に火はつかない。

とっくに他のグループは火を起こして、焼きマシュマロなんて楽しんでいる。

困ったものだ。僕らを見かねて、他のグループの人が助けに来てくれた。持っていたファーヤースターターを彼に手渡す。すると彼は、高速でマグネシウムとナイフを擦り、1分もしないうちに火がついた。(ガイドがやっていたやり方と全然違うじゃないか。)

なるほど、こういう柔軟さも大切なんだな、と思い知らされる。お礼にタバコを1本渡した。

一番最後に火をつけた僕らにのんびりマシュマロを作る時間なんて残されていないから、ついたばかりの火を雪で消して、次の場所へ向かった。

雪に穴を掘って、シェルターを作るという。雪は深さ2メートルはあろうかというくらいだったから、斜面を掘れば、人が一人すっぽり入るくらいの空間を作ることが出来る。

僕は雪で指に2箇所の切り傷を作りつつ、ギリギリ一人入れるかというサイズの穴が完成した。中はそれなりに温かく快適だった。(かなり無理した体勢をしていることを除けば、だけど。)

アクティビティはこれで終わりらしい。振り返ってみれば僕は、魚も釣れず、火も起こせず、雪掘りして手を怪我した人だ。

いつもYouTubeで見ているサバイバルというのはずいぶん難しいんだと思い知った。本当に遭難してしまったら僕はすぐに死んでしまいそうだ。

散々な結果だったけれど、とりあえず本人は楽しめたらしいから良しとしよう。

5日目(サウナ)

今日は何のアクティビティもないから友人とのんびりサウナに行くことにした。

宿についているサウナは結構本格的で、自分で石に水をかけられるタイプのものだった。こういうのを見ると、ついつい限界まで水をかけたくなってしまう。沢山水をかけた結果、熱くしすぎて顔を火傷するかと思った。

サウナを出たのち、冷水シャワーを浴びて椅子に腰掛ける。サウナの良し悪しを決める要素のひとつに、どんな椅子が用意されているのか、というのがあると思う。熱った身体を、静かで座り心地のいい椅子でゆっくり冷ますのが至福なのだ。

その点においてこのサウナは悪くなかった。木製の簀子状の椅子で、急すぎない角度の背もたれがついている。サイズも大きいからゆったりと腰掛けられる。

椅子に深く座り、取り止めのないことを友人と話す。

サウナに戻り、懲りることもなく石に水をかけ過ぎる。

冷たいシャワーを浴びる。

そんなことを3、4回繰り返すと、僕らは満足して部屋に戻った。

その後は、持ってきたパソコンを開いてカチカチと叩いていたら夜だった。(半分くらいはYouTubeを見ていた。)

夜中、友人からのメッセージを受けて外に出ると、なんとそこにはオーロラが広がっていた。最終日までオーロラが見れるなんて僕らは幸運だ。

部屋に戻った僕は、いい気分で眠りにつくことが出来た。

6日目(帰宅)

今日は18時間もの間、バスという名の鉄の塊に軟禁される日だ。この綺麗なラップランドを離れる寂しさと、バスに乗る憂鬱さを抱えながら荷物をスーツケースに戻す。

荷物の準備が終わった僕は、出発までレセプションで過ごすことにした。

暖房の効いた快適な空調、窓からは一面の雪景色、テーブルの上にはクリームの乗ったアイスココア。

ドイツ人の友達とよくわからない年金の話とかして(半分くらい聞き取れなかった)時間を過ごした。

ちなみに帰りのバスはというと、、一瞬でストックホルムに戻ってこれた。

結局ほとんど寝ていたからね。隣の人はガタイが良くて、僕の座席に5cmくらい肩がはみ出していたけど、そんなことも気にならないくらい熟睡した。

今日の音楽!

ABBA - Dancing Queen

ラップランド旅行を締めくくるには、スウェーデン出身の有名なアーティストの音楽がいいだろう。ABBAは言わずと知れた世界的アーティストで、『Dancing Queen』だけでなく、『Gimme! Gimme! Gimme!』 とか『Money, Money, Money』とか、皆どこかで聞いたことがあるような曲をたくさんリリースしている。ストックホルムのパーティーやクラブでは必ずと言っていいほど耳にする音楽だ。あとストックホルムにはABBAのミュージアムもあるらしいよ。

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