スウェーデンの北の果てでオーロラを見る①【真冬のフィヨルドに飛び込んでみた】

文化人への道

スウェーデンにいるからには、オーロラを見ずに日本に帰るわけにはいかない。そう思って僕は3月中旬、スウェーデンの北の果ての地、ラップランド行きのツアーに友人と申し込んだ。

1日目(バス移動)

ツアー当日、僕はユニクロの防寒用のダウンコート(ユニクロ史上一番の暖かさという謳い文句に惹かれて購入した)、ニット帽、スノボ用の手袋、と万全の防寒対策に身を包んでバスに乗り込んだ。

それにしてもスウェーデンがこんなに大きな国だとは知らなかった。メルカトル図法の歪みで引き伸ばされているだけで実際は小さいんだろうと舐めてかかっていた。じつは首都ストックホルムからラップランドまではバスで18時間もかかるのだ。これは僕の貧弱な腰がやられてしまうぞ、と覚悟を決めて乗り込んだ。

バスの座席は大して広くもなく、脱いだダウンコートが嵩張るから余計に窮屈に感じる。ユニクロのコートを強引に首に巻き付けてネックピローのようにしてみたり、あえてバスの座席に正座してみたりと試行錯誤する。

生暖かいバスの中で浅い眠りを繰り返し、ラップランドの宿に到着した夕方には僕は疲れ果てていた。

バスから降りて外に足を踏み出す。まだ少し眠たい僕を起こすためなのか、冷たい空気がコートの隙間から入り込んできた。マイナス15度の空気が脳の奥をスッと冷やしてくれて、この上なく気持ちいい。

顔を上げて辺りを見渡すと、彩度を低く設定したカメラで撮影したかのように青白くて、美しい雪山に囲まれていた。

ここで、ツアーの詳細についてだ。

1日目:バス移動

2日目:フィヨルド観光(ノルウェー)とナイトハイキング

3日目:犬ぞり・トナカイ触れ合い

4日目:Arctic Skills (湖上での釣り・火おこし・かまくら造り)

5日目:サウナ

6日目:バスで帰宅

2日目のナイトハイキングでオーロラを見に行くことになっている。

とりあえず移動で疲れていた僕は、宿の近くを少し散歩したのちに、ベッドで眠りについて1日目を終えることにした。

2日目(フィヨルド観光とナイトハイキング)

この日はオーロラを見にいくわけだから、2日目にして旅行のメインと言っても差し支えない。前菜やスープをすっぽかしてメインディッシュを頂くのもどうかとは思うが、そういう日程なのだから仕方ない。

その前にノルウェーに移動してフィヨルド観光をするらしい。バスで2時間かかるそうだ。前日18時間バス移動をこなした僕らにとって、2時間の移動なんて朝飯前だった。

道中、バスの窓からフィヨルドを見下ろすことができた。山の中に川とも違う細い海があるようで不思議な光景だった。

そしてついにフィヨルドの海辺に到着した。いざ近くで見ると、肩透かしを食らってしまった。なんというか、ただの「海」なのだ。富士山も登っている時には多分ただの「山」なんだと思うけど、それと同じだ。遠くから見ないと、フィヨルドかどうか判別できない。

ただし綺麗な光景であることに変わりはなかった。雪山に囲まれた海は波も少なく穏やかで、でも確かにその奥に底知れぬ闇の広がる海だった。なんだかスヤスヤと眠っている巨大なドラゴンを見ているような気分になった。(ドラゴン見たことなんてあるわけないけどね。)

そして一部の人は水着に着替えて氷点下の海に入っていく。事前にバスガイド(アキという名前の、ブロンドの長髪を頭の上で束ねた男だ)が、「冬のフィヨルドで泳ぐのは最高だぞ、新しい自分に生まれ変われる。」と言っていたからだ。

全く、こんな氷点下で泳いだら危ないのに何を言っているんだか。そう思いつつ、僕もアキの言葉に釣られて水着に着替えた。

もし機会があれば、一度試してみてほしい。マイナス15度の世界で冷たい海水に浸かるということを。僕は以前にもフィンランドで氷点下の海に入ったことがあるが、あれはサウナ直後の熱った身体だったから、今回とは全くの別物だ。元々冷えている体をさらに冷水に晒すというのはどうにも正気の沙汰ではない。

とりあえず僕の感想は「二度とやってたまるか」だった。

感覚のなくなった冷たい足先を必死に温めながら、次にバスが向かったのはノルウェーのナルヴィクという街だ。田舎町で、教会とちょっと大きなショッピングモールくらいしかなかったが、ふと振り返ると綺麗なフィヨルドと雪山が見える素敵な場所だった。

みんなは教会とか観光していたけれど、僕は海辺の小さなカフェでコーヒーを飲むことにした。コーヒーは酸味が強くて僕の好みではなかったが、目の前にフィヨルドが見渡せるカフェというだけで充分だった。広大な自然が日常に溶け込んでいる場所が僕は大好きだ。

その後、もう一度バスに2時間揺られたのちに宿に戻り、ようやく本命のナイトハイクの時間が来た。

(続きはこれ↓)

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